2025年10月13日月曜日

ラグランジュL-2 Ⅱ D-side X1版

 ダークサイドへようこそ!


月。

誰もが知る地球の衛星である。

衛星というにはあまりに大きな質量を持つこの星は、潮の満ち引きから、大気の循環に到るまで地球に対して大きな影響を与えている。(注1)

そして月のもう一つの特徴が「潮汐(ちょうせき)ロック」と云われる現象である。

それによって月は必ずある表面だけを地球に向け、その他の面は地上から窺い知ることの無い領域となる。(注2)

近年、宇宙機や観測技術の向上によって明らかになって来たが、それまではその場所は、恐れを持ってこう呼ばれていた。

「ダークサイド」


注1:仮に月という衛星が無ければ、地球の沿岸部は毎日津波の様な大波が起こり、地上は台風のような突風が吹き荒れるという。この事だけ見ても、地球は奇跡の星なのだ。

注2:このことにより、かつては「月の裏側に宇宙人の月面都市が有る!」などといった噂が、某誌に良く掲載されていた。


話を少し前に戻そう。

月の裏側を航行中だった連邦軍の調査船「ガリア201」は、運悪く(?)飛来したコロニーの隕石破壊用ミサイルに接触。


奇跡的に宇宙服を着ることに成功した「ライル」(主人公)を残し、他の搭乗員の命と共に船は宇宙の塵と化した。

自分自身「死」の恐怖が迫る中、たまたま眼前に現れた、月の裏側にある地球との「重力均衡点」(ラグランジュ点)、にある「スペースコロニー・L2」に取り付き、九死に一生を得た主人公。

だが、そこは狂ったAI「ZERA」とロボットが支配する狂気の世界だった。

ライフボートの動作不良で脱出に失敗した少女「メイ」と共に、幾多の試練を乗り越え、脱出艇でコロニーから逃げ出す二人の背後でAIコンピュータ「ZERA」の言葉が呪詛のように響く。

「目票は月ステーションと推測。ポイントJ-06にてシャトルを破壊する。」と・・・。


かいせつ

さて、久方ぶりのコマンド入力式のAVGとなりますこちら「D-side」。

かつて、このサイトにて解説しました、LagrangeL-2(ラグランジュL-2)の完全な続編となります。

コマンド入力式とは言いますが、時間を所謂「言葉探し」に浪費する事はまれで、寧ろピンチをどう切抜けるかの「発想」に重きを置いたゲームデザインとなっています。


例えば、ゲーム開始直後。

脱出用のシャトルに乗り、どうにか「ZERA」の手を逃れ、ようやく安堵した「ライル」と「メイ」でしたが、それは、シャトル内に響くアラームの音によってかき消されます。

何と武装が一切無いこのシャトルへ向け、コロニーよりミサイルが発射されたという事。

しかも、着弾予定は10分後との、余り嬉しくない情報も加わり、真に「ピンチを絵に描いて額に入れたような状態」!(※AKIRAより)

ミサイルは「ZERA」によって、宇宙船等の推進装置の熱を感知し、自動追尾するよう改造が施されています。

とりあえず、「ライル」君もこのシャトルについて詳しい訳じゃないですし、「メイ」ちゃんに到っては、既にこちらを潤んだ様な目で見ています。

「えーい、じゃあ俺がなんとかするわい!」

(GAME・START! ここから、マジで10分のカウントダウンが始まります!)


・・・で、死にました。
「何とか出来そう?」と、怪訝な目をするメイちゃんに、「一度、死んだと思えば大丈夫!」と、小粋なスペースジョークを交しながら(そんなシーンはありません!)TryAgeinを選択。

半ばやけっぱちで、「キー」(キーボード)を「オス」と・・・画面がシャトルのものと入れ替わります。

画面にはメニューがあり、様々なコマンドの中に「エンジン切り離し」の文字が!どうやらメインエンジンのみをパージ出来る様ですね。いつの間にやら時間は5分を切っています。

迷っている場合ではありません。

祈るような気持ちでコマンドを選択。

コクピットに現れた、エンジンパージ用のレバーを引くと・・・やった!

レーダーには、ミサイルらしき光点がパージしたエンジン部分を追って、こちらとの直撃コースを外れていく様子が!


やがて2つの光点は重なり合い消滅。

危機は去った・・・かに思われましたが、シャトルが向かっている、月軌道にある巨大宇宙ステーション「SOC-3」から通信で、「現在ZERAからのハッキングでステーション内が混乱の極みにある。こちらに来てはいけない」・・・との警告が!

推進剤はギリギリ。

シャトルはステーションよりの電波を受け自動航行中。

「・・・こうなったら、受信用のアンテナを物理的に切断しましょう」と、メイ。

咄嗟に出たにしては良いアイデアだ。


通常、こういった「脱出用シャトル」等の自動航行システムは切る事を想定していない。(裏技的なものはあるでしょうが、時間がありません)

じゃあ、船外活動だなっ!と、コクピットのドアのボタンを押す。

・・・反射的に閉める。

その向こうには(明らかに行動がおかしい)ロボットが1体こちらを向いて立っていたのだった・・・。

(※ここで、パスワードが表示され、この時点から再開が可能となります)

・・・やはり、「ライル」と「メイ」、この二人に安息が訪れるのはもう少し先の話になりそうです。

上記のパスワードによるコンティニューですが、これによって、「その場で起こっている事は、その場にあるもので解決(もしくは進行)可能という事(アイテム取り逃し等によるハマリがない)になり、プレイヤーはその場の謎解きに集中出来るのです。


ただ

前作でもそうでしたが、多少のSF的知識、科学的知識は必要でしょう。


たとえば、「ある宇宙ステーション」にて。
ドッキングベイに接岸した主人公をZERAによってハッキングされたロボットが待ち構えています。
主人公はこれをどうにか排除しないといけません。
ここで一度、周りを見渡してみます。ハッチを開ける「ハンドル」天井には「ライト」左側のシャッター内には燃料(推進剤)の入ったタンクが中にあります。

そうです!

やることは、ライトを割る→線をショートさせる→シャッター内の燃料タンクを外へ投げる→ハンドルを回しハッチを閉める→エンジンスタート!


でも、これはSFでは無いですね。
前回のラストみたいに「コロニーの○○を止めて○○○状態にする」と言ったようなSF的知識は必要無かった様に思います。

兎にも角にも大切なのは「ミル」コマンド

SF的知識は必要無いと言っておいて何ですが、用語は多彩です。壁面にあからさまにフタのようなものがあったとします。
人によって捉え方は様々で、「フタ」「ハッチ」「パネル」「メンテナンスハッチ」等、これがSFとなれば尚更です。
ここは初心に返って「ミル」コマンドを新しい画面が出る度に実行するクセを付けておきましょう。ここで読み上げられたものこそクリアに必要なものが含まれているのです。

総評

こちらのゲーム、前作「LagrangeL-2」をプレイした人なら必ず遊んでしてほしい逸品ですね。
当時、技術的にリアルタイム処理、アニメーション処理がまだ難しかった時代に、アイディアで、スリル溢れるゲームを作りあげたことがまず素晴らしいですね。
私も前作はなかなか手こずったのですが、こちらはほぼノーヒントで1か月くらいでクリア出来たと思います。

あと、AI・ロボット・ドローンといった、現代になってより耳に入るようになった言葉たち。
彼らとはいつまでもより良い人間のパートナーとして居てもらいたいものです。

このあと

ゲームは、2つの宇宙ステーション。


月・そして「メイ」との別離。

そして、因縁のコロニーL2へ。


ラストは「プ、プロトカルチャー!」(爆

おまけ

このゲーム当時のゲームらしく隠しキャラ(表情)等があるみたいで。
例えば、脱出のシャトル内で「メイ」に向かっていきなり「○○○」。

もう一つ、「絶対音感」が無いから無理~と、お嘆きの全国の「ラスト・ドア」前の「ライル」さんへ。




「カクレキャラ ミル」と入力すると・・・。(救済措置かな?)

2025年10月11日土曜日

水鏡月 聖(みかづき・ひじり)先生

 いつの間にか、「ちゃーくん」の弟さんが、大先生に!




今より数年前の話である。

僕の友人で、「ハイドライド3」の強キャラ・X68kPROユーザーの、ちゃーくんから、メッセージが届いた。
普段から様々な近況を送り合っていた「グループ」であったため、最初は気にしていなかったが、後になって読んでみると、スゴい事が書かれていた。
曰く、彼の弟が、角川書店主催のスニーカー文庫のコンテスト(注1)で銀賞を獲ったとの事である。

(注1:正確には第27回スニーカー大賞)

コンテストのサイトを見てみると、彼が教えてくれたペンネーム(注2)と、作品が!

さらっと書いてしまったが凄い話である。
アナタ、角川書店ですよ!カドカワ!

「これは単行本化されたりして~。」
・・・と、はにかむ友人をイジったりしたものですが、何と、現在(2025年10月時点で)単行本が4冊も!

何せ、かの「涼宮ハルヒ」を世に送った賞です。
それを思えば、いずれ、「アニメ化」も夢ではないかと!

読後感爽快。舞台となっている岡山県の方のみならず、皆さんに読んでいただきたい青春ミステリーの白眉です。

注2:「水鏡月 聖」と書いて(みかづき・ひじり)と、読むそうで。
ペンネームが読みにくい作家としても著名な先生。何故、このペンネームを付けるに到ったのかは、受賞作「僕らは「読み」を間違える・1巻」にて「あとがき」に掲載されています。

2025年10月4日土曜日

祝・完結「ヴィンランド・サガ」

 ここではない、ドコカ

2005年4月から連載が始まり、連載中2回アニメ化もされた「幸村誠」氏による漫画「ヴィンランド・サガ」。

約20年にわたる長期連載であったが、2025年9月号をもって完結した。


11世紀初頭のヨーロッパ。
ローマ帝国崩壊後、人々は前時代の文明を継承出来ず、再び森と野生動物と隣人に怯える世界を生きていた。
そんな中、勢力を誇っていたのが、北海を我が物として略奪の限りを尽くしていたヴァイキングだ。

主人公はヨームの戦鬼(トロル)として恐れられた元戦士の子、「トルフィン」。
彼は父を奸計にはめ、自分の目の前で殺した「アシェラッド」の軍に入り、徐々に戦士としての頭角を現わしてゆく。

多くの人との出会い。そして、父の敵である「アシェラッド」との奇妙な信頼関係。

自身も毛嫌いしていた「奴隷」という身分に墜ちたり、解放されたり・・・と、さまざまなドラマを経ながら、子供の頃に夢見た土地「ヴィンランド」(アメリカ大陸の北部)への入植を行う・・・。

・・・と、いう壮大なストーリー。(※アニメ化されているのは丁度中盤くらいでしょうか)

読後の感想は、つきなみですが感無量・・・と、いった感じです。

本屋に並んでいた、前作「プラネテス」をジャケ買い(・・・と言うんでしょうか?表紙が気に入って購入)して以来です。
中弛み無く最後までハラハラさせる展開は、ストーリーテラーとして鬼気迫るものがありますね。


奴隷から解放された主人公は、「強い者は、何をやっても許される」という、当時の世界をどうにかしたい・・・と、思い始め、「非殺の誓い」を自分に課します。

・・・が、当時のヨーロッパを覆う戦乱。更に、かつて「侠気のトルフィン」との異名を轟かせていた自分の過去までもが、主人公を戦いの渦へと巻き込んでゆきます。

果たして「トルフィン」は、「非殺の誓い」を守り、この世界に居場所が無い人々を連れ「新天地」への入植を果たすことが出来るのか?


コミックス全29巻。

秋の夜長に、お勧めです!