2024年8月2日金曜日

エニックス(現スクウェアエニックス) (3)

似て非なる2作品

恩田尚之

さて、3回に分けてお届けしましたエニックスAVGの列伝も、残すところあと2本となりました。
この頃になるとPCにおけるAVGはいわゆる「美少女ゲーム」にシフトしてゆき、プラットフォームもPC-98やX68000、FM-TOWNS等へ移ることとなるのです。

かくいう私も、2万円程で手に入れたPC-8801mkⅡFR Model30(注1)をどうせ今後購入するからと、先行購入したX68000のアナログモニター(注2)に接続し、使っておりました。そう、いつの間にやら私は大学を卒業、地元で就職し、実家暮らしに戻っていたのでした。

当然、悪友達も元気に健在。クルマという新たな翼を得た青年達(精神年齢は高校くらいから止まっている)は、PCショップや、ゲーム店、アニメショップでその資金力が尽きるまで(注3)おバカなものを買いまくっていくのであった。

おっと、閑話休題。
とにかくゲームにしても、これまで指をくわえて見るしかなかった恨み(注4)を晴らすが如く、購入していた。

その中でエニックスのものが2本。
Angersと、ミスティーブルーです。

土器手司

Angersは、当時、新進気鋭のアニメーターだった土器手司氏を起用(注5)し、オカルトをテーマに魅せるAVG。

土器手司

ペルーにて行われた外資によりダム工事、その際に発見された遺跡より何者かにより持ち出された青い宝石。その石を手にした者が次々と変死してゆく。

土器手司

そして、ある変死現場に立ち会うこととなった主人公=ブライアンと、その恋人エリスの数奇な運命を描く、マニアならずとも垂涎のAVGである!
まさにPC-88を購入したら遊びたいソフト「スナッチャー」「Ys-Ⅲ」等と肩を並べる1本でした。

土器手司

88を所持していた後輩に貸して貰ったが、何を思ったか本編ディスクにシールを貼ってブランクディスクにしてやがった!・・・恐るべし国民機ユーザー。
そして、ようやく中古にて本編購入。プレイすることに。

・・・うむう、思っていたのと違う・・・。

何と言うか、テンポが、壊滅的に悪い。
主人公の思考や状況説明は一瞬。これは良い。
が、しかし、会話のみ、実際に喋りもしないのに、口がパクパクしている間コマンド入力を待たされるのだ!

土器手司

これは1度聞いた会話でも同様である。(せめてそれだけでもスキップ出来れば・・・)
そして、この設定は最後まで変更出来ない。・・・というかそういう設定そのものが無い。
コマンド選択式であるが、使用するキーがファンクションキーと、地味に遠い。
あらゆるキーを試した後、恐る恐る「会話」を選択すると、案の定、同じ台詞をタラタラと・・・苦行である。

ストーリーの良さ、アニメーション、音楽。
全てをこれがスポイルしていると言っても過言では無い。
どうも、PC-98版には、デバッグの為にテキストが高速表示する隠しコマンド(注6)があるらしい、が、自分たちも辛いんだったら最初から入れろと言いたい。
ゲーム終了すると、キー入力無しで最後までストーリーを見せてくれるモードが選べるのだが、一体、何人がこれを使用したのだろう?
(愛故に)思わずアツくなってしまったが、98版(注6)も買っているので許して欲しい。



恩田尚之

かわって、ミスティブルーの方であるが、こちらはグラフィックに(現在も「ダンダダン」・「MFゴースト」等で活躍中の)恩田尚之氏、サウンドに(Ys・ソーサリアンの)古代雄三氏と、これまた気合いの入った布陣。

恩田尚之

・・・だが、主人公がイケメンミュージシャン、舞台が音楽業界と、当時の僕らとは余りに懸け離れた世界にイマイチ買う気が起こらず暫く敬遠していたのでした。
それにTVドラマなんかで、ギョーカイ・トレンドと言うワードもダサく感じて来ていたのもあるし。
そんなある日、このゲームの情報をPCゲームの雑誌で見た、アナログパレットを巧みに使用した画像は88のゲームの基準を遙かに上回るクオリティ!当時ようやくアナログパレットを使ったゲームが普及し始めたばかりで、ちょっと興味が沸いた私は即購入(社会人なんで)するのであった。

恩田尚之

ゲームはこのAVG内における有名バンド「オルフェ」の解散コンサートより始まる。

恩田尚之

主人公はこのコンサート中、デビューのプロデュースをめぐり、知人と会うが喧嘩別れしてしまう。
会場を後にする主人公。そのバイクの後部座席にいきなり乗り込んできた女性、それは、高校時代の憧れの人「麻衣子」だった。

恩田尚之

恩田尚之

「麻衣子」の勧めで昔の友人たちと再会し、楽しい時間を過ごした主人公であったが、翌日コンサート会場にて、喧嘩別れしたプロデューサーの遺体と主人公のアドレス帳が発見され・・・と、言ったお話である。

恩田尚之

ゲーム展開は、最初から最後まで「素晴らしい」の一言。テンポの良いアニメーション・ストーリー展開・サウンドと、1度始めたらぐいぐい世界観に引き込まれてゆきます。(正直今でも面白い。レヴュー書きながら思わず半分ほど遊んでいました。)
条件は分かりやすいですが、マルチエンディング・マルチストリー。最初の殺人事件すら話のエッセンスの一つと化す、ちょっとほろ苦いストーリー。

恩田尚之
これが会話画面。台詞もどれも正解の様な・・・。
選択によって青いグラフが増減します。相手の
ポーカーフェイスの内側が見える様なシステム。

コマンド選択式ながら、台詞を自分自身で選択し、相手の好感度の増減が目に見える会話システムが、スリリングな駆け引きを更に演出します。

恩田尚之
コマンドはテンキーで楽々。一度見たメッセージは
勝手に飛ばしてくれます。

ある意味こういうAVGってあまり見ないので、現在でも新たなストーリーと、このシステムである程度セールスが見込めるゲームが出来るのでは?「オホーツクに消ゆ」っぽいゲームが、システムそのままでリメイクされているのを見るとそう思わずには居られないのでした。

お・ま・け

このミスティーブルーにはおまけでCDシングルが1枚封入されていたのですが、はっきり言って当時はどこで使用されているのか分かりませんでした。
きっと雄三氏によるアレンジ版だろうな・・・ぐらいに思っていたのですが、ある日友人のI君がPC-8801FHを買ったという話を聞き、布教のためにこのゲームを持って行ったのです。
「ふふふ、古代サウンド&恩田グラフィックでド肝を抜いてやる。」と、1人ほくそ笑んでいたのですが。そこから、あのCDの音が!!

PC-8801FH
4MhzでしかもSBⅡ未装着だった方は、観て
聞いて欲しいOP。

しかもOPのグラフィックもエフェクトが掛かって更にゴージャスに!
そう、賢明な読者の方はお気づきでしょうが、彼が購入したFHは標準でクロック数が倍(8Mhz)。SoundBordⅡ(別売)搭載だったのです!
I君どころか、こちらもド肝を抜かれましたとさ。


注1:大ヒットとなった、SRの後継機。中古とは言え2ドライブのモデルがこの価格とは。

注2:この後本当にX68000XVIを購入。シャープユーザーは次々とそちらに移行しておりました。バブルだなぁ。

注3:実家暮らしの利点として、お金を使い切っても衣食住に困らないのだ。

注4:シャープを唯一神とする、クリーンコンピューター原理主義者(爆)は、他機種へ日和ることを最も嫌う。が、X1シリーズの終焉が見えた当時、一時的に欲望を解放させる事が許されていた。

注5:この頃のエニックスは、それぞれ作画のプロを起用していた。

注6:PC-98版は当初カットされた幾つかのシーンを追加した、「完全版」。当然システム面でも改良が・・・全く無く、やはり苦行でした(涙)
隠しコマンドも反応しなかったし・・・。

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