2024年10月19日土曜日

X68000 XVI(CZ-634C)

ヤツのパソコンを超えろ!

Sharp X68k

話を少し前に戻そう。
時に1986年の事である。
シャープ系「クリーンコンピュータ原理主義者」なら必ず観なければならないTV番組「パソコンサンデー」にて、とんでもないスクープが飛び出した。
当時どの会社のマシンでも再現不可能だった、コナミのグラディウスが4オプションで動いている。
完全再現を目指して開発されていたそれは、担当者にして、「1ドットでも違ったら腹を切る。」と言わしめる程 (注1)の拘りを持って作られているという。
鳴り物入りで発売されたTurboZ(注2)の存在を吹き飛ばす程のインパクトを、シャープユーザーのみならず、日本のPCユーザーに与えたTV事業部(注3)乾坤一擲の作「X68000」の登場である。
パーソナルワークステーションと銘打たれたその機体にはその実、「ワーク」では無く最新の「ホビー」が所狭しと詰まっていた。当時、ニューヨークにあったツインタワーを彷彿とさせる「マンハッタンシェイプ」。一度据えたらなかなか使う事のないキャリングハンドル。
アフターバーナーで初めて使用した人も多い?
トラックボールにもなるマウスとか。

凄い!」・「欲しい!」・「でも、買えない・・・。」
その、3フレーズが瞬時に日本中に溢れたに違いない。
当時の私は、大学進学が決まった、只の高校生である。これから、4年間親のスネを噛りまくるのに。モニターコミで約50万のパソコンなど夢のまた夢である。

まあ、しばらくTurboで遊ぶさと、夏休みに帰省した私の耳に、とんでもないない話が飛び込んで来た。

当ブログで既にお馴染み、常に一歩先を行く男、「Ryo」君が「X68000」を買ったというのだ。

矢も盾もたまらず、彼の家を訪ねた私の網膜にグレーの「マンハッタンシェイプ」が写し出された。

「よっ!」
勝ち誇った彼の声。
膝から崩れ落ちる私。
完敗だ。

・・・。
いや。
この際、勝ち負けは関係無い。
「ゲーム、ゲームを見せてくれぇ~。」
情けなく懇願する私に彼は、シャープのロゴが入った1枚のFDを見せてくれた。マシンのスイッチを入れ、それをドライブにセットする。
ウィーンと、小さな音がしてFDが吸い込まれて行 く。
おお、X68000はこんなところも自動なのだ。

やがて、X68000のロゴの後に、AppleのマッキントッシュのようなオシャレなGUIが。
何か、よくわからんけど凄い!

よく見ると中にGのマークのアイコンが!Ryo君が慣れた手つきでマウスを動かし、起動する。

Sharp X68k
良くも悪くもX68000のマイルストーンになった一本。
基盤と筐体を買う人もいたので、将来性を考えたら、
「超格安」という考え方もある。

Sharp X68k
コンシューマー版では、火山の噴火が終わると、一端
スクロールしビッグコアが現れる場合が多かった。
こちらは、ちゃんとその場でスルッと登場。感動した!

おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
凄い!スゴ過ぎるぜぇ!
未だハードウエアスクロールやスプライトすら装備していないPCが多い中、このマシンは潔いほどの割り切り具合。
「ゲーミングPC」なんて影も形も無い時代である。(注4)
そして、彼が他に所有していたのが、

Sharp X68k

Sharp X68k
意外に思うかもだが、PC版のXEVIOUS移植はここに
至るまで厳しいものがあったのも事実。(MSX2版除く)

「X」の名を冠するPCを所持するのであれば、買って動作を確認せねばならない。
「ゼビウス」
Ryo君曰く、もう「動いて当然」の世界との事。

Sharp X68k

Sharp X68k
画面も凄いが音楽も凄いのである。

「蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン」ユーラシア大陸統一とういう「光栄歴史3部作」屈指のスケールを持つ作品。超破天荒な姫様「ラッチ」さんの登場で、モンゴル編から始めたプレイヤーは、かなり有利に??
X1版が霞んでしまう、サウンド・ビジュアルショック!

という事で、時にRyo君宅で、最新のゲームを見せて貰っていた我々であったが、徐々に異変が起き始める。
友人の「 I 」君がACE-HDを、「 T 」君がProを購入したのだ。

こうしてX68000包囲網が出来上がって行く様を指を咥えて見るしかなかった私。
しかし、1991年、無事就職をさせていただき、給料というものが手に入る年代に。

そして無事に、(現代だったらあり得ないが)超過酷労働&超高額報酬の「虎の穴」的な施設に派遣も決まり、入社Ⅰ年目にして、当時発売されて間もないX68000 XVI(エクシヴィーと読む・16Mhzのクロック周波数に由来すると思われる)を購入。
既に入手していた専用アナログモニターと合わせ、X68000中興期の一翼を担うこととなる。

子供の頃は親を見てこう思った時もあった。
「ゲームやアニメ・マンガ・プラモなんかは、大人になれば卒業しているのだろう」と・・・。
・・・とんでもない話である。
会社で「一般人でございます」的な立ち位置の人も、僕が「その筋」の人と見るや、急に本音を出してくる。

どの人も、どの人なりに「こじらせ」ているのであった。

そして、我々は更なる16ビットゲームの世界へと墜ちてゆくのであった。




Ps.今回で50回目の記事になりました。無事キリ番となる回を迎える事が出来ましたのも、友人を含め、このページを訪れていただいている皆様のお陰であります。今後も自分流のゲーム愛について語って行く所存です。今しばらくお付き合い戴ければ幸いです。

2024年10月19日 Astronauts


注1:当時、担当者は「1ドットでも違ったら腹を切る。」とは、言っていなかったらしい。これはのちの「パソコンサンデー」でも否定された。まあ、それくらいの気概を持って仕事をしていただいたということだろう。確かに凄い移植である。

注2:X1TurboZ。
発表当時、「Z」は「ゼータ」と発音するのでは?だったら、後継機は「ZZ」「ダブルゼータ」?・・・といった話題が「oh!mz」(oh!X)誌上で盛り上がった。

注3:シャープという会社は、コンピューター部門に於いては「NEC」・「富士通」に比べれば、巨人の前の蟻であると揶揄される。そんなシャープのしかもコンピューター部門ではない、TV事業部から生み出されされたのが「パソコンテレビX1およびX68000シリーズ」などの「CZ」シリーズである。
ちなみに、コンピューター部門のマシンは「MZ」シリーズである。

注4:海外にはコモドールの「Amiga」というマシンがあり、時に「X68000」を「和製Amiga」と評する向きもあるが、実際のユーザーとして異を唱えたい。

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