「ジェイムス・バートン」死す!
ラーズ18世の崩御より約100年(グラディウス歴)。
曾祖父(ジェイムス)の影響で、軍学校に入った俺は、親父には発現しなかった高い「リークパワー」を認められ、かつて曾祖父も在籍したという宇宙軍への入隊を果たした。
77歳という我々の高度な医療技術をもってしても早すぎる死は、陛下の生きた激動の時代を物語っているようであった。
よく、父や母が語ってくれた曾祖父の伝説を思い浮かべ、主星グラディウスへのシャトルに揺られていた。
そう、それは一人の戦士の物語。
折しも第二次バクテリアン戦争より百年、今年は18世の子孫としてではなく、宇宙軍関係者として「平和式典」に参加できる。
式典が終わり、久々に両親の住む実家へと引き返そうとした私を、見知らぬ男性が引き留めた。
「デヴィット・バートンさん?」
「はい?」
「ラーズ18世に大変お世話になっていた者です。」
曾祖父の影響もあり、軍関係の猛者達には割と顔の利く方だが、見覚えが無い。顔立ちも「制服組」というより、「背広組」といった感じか?
「どうです?この後?」と、男はグラスを持つジェスチャーをする。
「18世も、酒にはうるさい方でして・・・。」
訳知り顔で語る男。通されたバーは割と落ち着ける雰囲気の良い店だった。
「長寿保証遺伝子ですか?」
「平和を得て百年の時が経ちましたが、当時の記憶も失われつつあります。」
「・・・。」
「なかなか、楽にはなれませんな。」
所謂、「不老不死(メセトラーゼ)」というやつだ。掛かる費用も莫大なため、政府でも一部の「要人」しか施されていないというが、それを差し引いても必要な才能の持ち主なのだろう。
「18世の時は宇宙軍でしたが、現在は諜報部でして」
おもむろに男が端末を差し出す。
「我々の恒星系のエッジワース・カイパーベルト周辺。映像は2日前です。」
画面は大昔の「ビデオゲーム」の様な漆黒の宇宙。が、刹那、空間が歪む。
「特異点です。」
突然、空間一杯に爆発のようなものが・・・。いや、これは!
「人工太陽です。」
「!!」
「おそらくバクテリアンの。」
「軍は、どうなっている!」
「もちろん、特異点が現れた時点で、スーパーサーベルタイガー・スーパースラッシャーの二個大隊を偵察に出しました。・・・隊員は全員「二階級特進」となりましたがね。」
「!!」
スーパーサーベルタイガー・スーパースラッシャーといえば、宇宙軍の誇る主力スペース・ファイターだ。
「多くの貴重なパイロットの命と引き換えに、得られたのがこの「映像」と、敵の通信の一部を解読した「ゴーファー」という言葉のみです。」
「くっ、しかし、どうする!?」
「VIXEN(ヴィクセン)。」
不適な笑みを浮かべて確かに男はそう言った。
「24時間以内に発艦可能です。」
「しかし、予算の削減のための妥協案として、サーベルタイガー・スラッシャーの改修にとどまったのでは?」
「それは、「戦争」を知らぬ政治家のタワゴトですな。」
「では行きましょうデヴィット!アナタの乗機が待つ秘密基地へ!」
「おおっ!ついにあの機体に乗れるのか・・・って、おい!!」
「シリアスっぽいストーリーでついつい、俺もノッちゃったけど、何でパイロットが俺って決まってんだ?」
「ジイちゃんや、親父、お袋に良く言われたっけ。曾祖父である「ラーズ18世」は、所謂「お調子者」で、人から担ぎ上げられたり、若い女の子にキャーキャー言われると、ついつい酷いミッションでも出撃していたって!」
「で、余りに無茶な作戦過ぎて随伴機も付いて行かず、ワンマンアーミー状態で、気付けば敵地。命からがら根性でミッションクリアし帰還すれば、持病の痔は再発するわ、リークパワーをマシンに吸われ、抜け殻の様になるわ・・・。」
「曾祖父が早死にしたのも、その所為だと親父やオフクロが言ってたぜ。」
「後宮・・・。」(ボソッ)
「うん?」
「後宮です。何故、アレほどの劇戦地へ皇帝は向かわれたのか?使命感?正義感?・・・違います。」
「解りますか?「ラーズ20世」・・・いや、将来の陛下!」
「陛下・・・。俺が・・・。」
「いいですか。皇帝になった暁には、妙齢の美女揃いといわれている「後宮」も貴方のものとなるのですぞ!」
「妙齢の・・・美女・・・、揃い・・・。」
俺の心の中で何かが弾けた。
「何をしている!行くぞ!」
「おおっ?」
「バクテリアか・バイ菌か知らねえが、俺とヴィクセンの敵じゃあねーぜ」
オラオラオラ!!
出撃だぁっ!!
・・・
・・
・
「・・・行ったか?」
「はっ」
「まさかこうも簡単に堕ちるとはな。高い金だったが、貴様を生かしておいて正解だったよ。」
「はっ、光栄であります!」
「これで予は、この重責と、後宮の婆さん共から解放される。心から礼を言う。」
「ありがとうございます「皇帝陛下」!いえ、「ラーズ19世様」
※(2)へ続きます。
注)この物語はフィクションであり、よく似た名前の人々が登場しますが、㈱コナミ様制作の「グラディウス」シリーズとは、一切関係ありません。
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