2025年9月27日土曜日

北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ(1)

新作(?)発売一周年記念 機種別比較



・・・と言っても、約一年前にリリース(2024年9月12日発売)されていたのワタシが知らなかっただけなんですけどね・・・。

そう「黄金の羅針盤」のレヴューをする際に、ジーモードアーカイブスのチェックをしていたのです。
そうすると、1年前にリリースされていたのを、現在(2025年9月)、発見したのですねぇ。(恥)

レトロゲームばかりプレイするのもいい加減にしろという感じですが、まあ、スキなのでしょうがない。

そこで今回は、発売一周年記念としてSteam版を購入し、レヴューすると共に、これまでのバージョンについても語ってゆきたいと思います。

では、始めましょう!

ストーリー

東京湾、晴海埠頭にて発見された男性の死体は、身元を調査した結果、北海道の出身者であった。
躊躇無く胸に撃ち込まれた「弾丸」と雑に海に投げ捨てられた遺体。
事件の背後に「反社勢力」の関わりを感じた主人公(ボス)は北海道へと渡る。
釧路署の刑事、「猿渡俊介」と共に捜査を始めた主人公。だが、それを嘲笑うが如く第二、第三の殺人事件が起こる。

NEC PC-6001版(旧シナリオ) 

最初期版(PC-88版と同時期発売)。
ゲームを開始したユーザーが先ず面食らうのは下のような画面だろう。


こちらは、昔のアナログTVにRF出力等(ビデオケーブルでも無く、アンテナ線で接続する方式)で接続した際の、いわゆる「にじみ」を利用して、擬似的に色を付けているのだ!
これは、PC-6001のスペースハリアーとか、海外では「AppleⅡ」等でも使われた技術(裏技?)。ただ、「より鮮明な画面を!」と、専用モニタを購入すると画像がモノクロになってしまう。
今回は、エミュレーターの「にじみ画面フィルタ」を使用して再現する。


ゲームを開始すると簡単な事件のあらましが、表示される。スペースキーを押すとゲームスタート。お馴染みの「晴海埠頭」より捜査が開始されます。


こちらも、なかなか良い感じのグラフィック。
いい味出してますねえー。


他の作品が、「海」・「流氷」・「鉛色の空」といったテーマで、オープニングの絵が用意されているのに対し、ピーカンの空に山です。


オープニングとエンディングでPSGによる音楽が流れます。
MSXが未発表だった当時、同級生がプレイしていたのは全てこちらの機種版でした。
内容については各機種差はありません。
ただ、セーブという概念がなく全4章に分割されてテープに収録されており、各章の終わりに表示されるパスワードを、次の章で入力するという形となっています。パスワードもドラクエの様な複雑ものではなく、「かにがくいたい」等、合言葉的な意味でしたね。
実はパスワードはMSXと共通で、当時、同級生にヒントを聞く際に、その辺りで進度が解ったりして。
皆さんそれぞぞれ、情感タップリにヒントをくれるのが印象的でした。
これは、当時としては驚くほどシナリオの良い、このゲームならではでしょうね。

NEC PC-8801・PC-9801版(旧シナリオ版)

こちらはとてもP6版と同時期に発売されたとは思えない、美麗なグラフィックのPC-88版です。(PC-98版も同内容・FM-7は申し訳ありません!プレイできておりません)
潔く音楽等は全くありません。


オープニング?の際にフラッシュバック的に流れるグラフィック。
さりげなく、東京編(?)のクロキの顔が分かるのはここだけ?
当時のサスペンスドラマのオープニングを見てるような気分になります。



いやー、今見ても色あせないグラフィック。画面も実は、瞬間表示。(MSX・P6はライン&ペイントかな?)
キレイに色分けされ読みやすい平仮名交じりのオリジナルフォントといい、さりげなく技術の高さも感じます。
そして、何と言っても堀井先生の「大発明」は右側の「コマンド選択」です!
これによって、警察が行う「捜査」を誰もが躊躇なく実行でき、ゲームに没頭出来るのでした。



また、このバージョンでは精細に描かれたグラフィックのお陰で、実際にロケハンを行ったロケ地を巡る「聖地巡礼」を行ってる人をネット上で多く見かけます。
そこでは特徴的な慰霊塔が、実は○○だった!とか、港湾事務所は、○○だった!とか、面白いネタもいっぱいあるので、お時間があれば検索してみては如何でしょう?

MSX版(旧シナリオ)

えー、今回、最後に登場しましたのは、我らがMSX版です。

ちょっと、子供に買ってあげたら、泣いちゃうような
箱絵。もう一つは以前ENIX回で語った「軽井沢誘拐案内」。
この箱絵!正直、エロゲをレジに持って行くよりテンパり
ました。(汗

箱の背面には美しいグラフィック。
でも、よーく見て下さい
画面端に小さく「画面写真はPC88で撮影したものです」
との表記が・・・。



一見するとPC6001版と大差無い様な感じで始まりますが・・・。


なんとも言えないグラフィック。
でも、これがMSXファンにはシンパシーを感じちゃうんですよねー。
 

第一発見者の「たかのさん」なんか若返って、「ヒロミ・郷」的な雰囲気に!(爆


余談ですが、このゲーム、実際のメディアは持っていたのに、何故かイメージ化に失敗ばかりして、レビューに使う事が出来なかったんですよねぇ。

MSX版では、オープニングと、エンンディング、そして、
芸者さん(!)のシーンでBGMが鳴ります。
特にエンディング曲は秀逸!!

結局、テープ4本分をWAVEでPCに取り込んだトコまででずーっと塩漬けになっていたのです。
それが、近年のエミュレーター(使用エミュレーター:OpenMSX)の進歩で、テープイメージとして、WAVE形式がそのまま読めるようになっていたのです。
おっかなびっくり試してみると・・・。
起動しました!

なんか、あっさりと。
このエミュレータのお陰で、最後までレヴュー出来たのです。

ええ・・・。ここまでが旧シナリオ版となります。この後はファミコン以後のシナリオ。そして、2024年に発売されたまさかの補完シナリオ「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ  ~追憶の流氷・涙のニポポ人形~」について、語ってみたいと思います。

・・・が、相当長くなって来ましたので。次回に続きます。

後編をお楽しみに!

2025年9月21日日曜日

X68000とコナミ

 コナミ参戦!!


と言っても、X68000Zの話では無い。











1989年の話である。

当時、まだ貧乏学生だった私は、友人のRyo君の家でしか「X68000」を体験出来なかった。

そのRyoが、あるとき私と弟にこう言った。

曰く、「○○駅前のホテルで開催されるイベントに、一緒に行かないか?」・・・との事だった。

通常はこう言われると、くだらない自己啓発セミナーか、宗教団体の勧誘、自然食品の共同購入等が頭に浮かび、ちょっと構えてしまうのだが、やはり彼は一歩先を行く男。

彼の手には、背面にツタンカーメンの黄金のマスクをあしらったカード型の電卓が。

彼はX68000のオフィシャルなファンクラブ(EXE(エグゼ)クラブ)に入っており、その会員証が「カード型電卓」となっていたのだ!(うーん、流石シャープ!)




かくして、イベント会場にやって来た私達は、まずX68000のデモ機に驚かされる。会場をぐるっと取り囲むように、デモ機が設置されており、それぞれの画面には様々なゲームが動いていた!

当時、モニター含め50万円は下らないマシン。

更にホテルの1フロアを借り切ってのイベント。

多少なりとビジネス関連のお堅い話題が入るかと思いきや、会が始まると正面にはキーボードが3台並び「スペース・ハリアー」の「メインテーマ」の演奏が!

奏者・司会の方々は確か、永田英哉(Yu-You)氏、Gorry氏、そして当時「パソコンサンデー」等で活躍されていた、(現「スタジオベントスタッフ」代表取締役社長)「山下章」氏と、「マイコンBasicマガジン」から飛び出したかのようなライター陣のお姿がっ!

キャッチーなBGMでつかみはバッチリ!

会場も、僕らくらいの学生から子供までが多く(高級機なのにねぇ)、凄く盛り上がっていたように思います。

・・・おっと、語りすぎて趣旨から外れてきてますね。

その中で山下さんが、X68000の最新ゲーム情報を、こっそりとリークしてくれるコーナーがあり、「コナミ」の本格参入と「A-JAX」発売の発表があったのです。

A-JAX

現在では知る人ぞ知るレアなタイトル。
回転機能の無い68で回転・拡大・縮小を
行っています。



発売はコナミからですが、開発はSPS。長らく家庭用移植が無く(現在では「アケアカ」(PS-4)で、アリ。)X68kユーザーとしては鼻が高い1本。

各ステージのロードは長いですが、ゲームは良く出来ていると思います。


パロディウスだ!ー神話からお笑いへー



テレビで良くセクシーなシーンが流れた際の
効果音として余りにも有名な「声」

かつて、MSXにて発売された「グラディウス2」をスタッフの一人が趣味で書き換えて作成した「パロディウス」。

嘘かホントかそれのアレンジが余りに良く出来ていた為、そのまま発売に到ったとされる。

これは、その逆移植版。

コナミらしいチョイとパンチの効いたギャグと、クラッシックアレンジのBGM。

X68000版は初の「完全移植」となります。(今回より開発もコナミ)


生中継68




えっ!と、思われる方もおられるかも知れません。
MSX2で「激ペナ1・2」を制作したコナミさんですよ!
ちゃんとX68000でもリリースされております。
我が家でも意外と接客ゲームとして大活躍。お手軽且つ生音のような迫力・アナウンスが楽しい、隠れた名作だと思います。これがあるから「プロ野球スピリッツ」が今も・・・とか、思ったりして。

グラディウスⅡーGOFERの野望ー





遂に、遂に来ましたファン待望の初の完全移植!!
コナミはこれを移植したいが為に参入したのでは?
と、思うくらい完成された1本。
HDDインストール・増設メモリ・MIDI対応!申し分なし!


出たなツインビー!




何と、アーケード版稼働のその年に、完全移植!・発売!!となっている作品。

このシリーズより世代交代(ちなみに、旧作の搭乗者は今作の搭乗者それぞれの父親という設定となった。)が行われ、キャラ設定が大きく変った(萌え要素が強くなった?)ため、ちょっとした物議を醸した1本。

無論、ゲームの出来は申し分なし。MIDIもSC-55のアレンジにスタッフが慣れてきたのか、神曲が多いです。(「MIDIPower-Pro」のNo.1に、唯一、ゲームの音そのままの「SMFデータが」収録されていたほど。)


悪魔城ドラキュラ


  


X68000最後の作品。
発表された際に「何故、アーケード版移植せんのかなぁー?」と、思った方は私だけでは無いハズ。
そう、かつて雑誌の記事で見ただけで、プレイどころか、稼働している画面を見たことが無かったのです。
結果は大正解!
ドラキュラシリーズの第一幕の集大成として、そして、「ドラキュラX」シリーズへバトンを繋ぐ作品として、現在でも語り継がれる名作としてX68000の歴史に燦然と輝く作品になりました。


さて、MSXの時と同様、短いながらもX68000の歴史に十分すぎるほどのインパクトを与え、そのマシンそのものまで、現在の「X68000Z」のクラファンの際にみられたような「熱気」を残す事に成功した立役者の一人、それは「コナミ」であると言ってしまって差し支え無いでしょう。
今回は、さらっと紹介するのみでしたが、いずれ、それぞれのタイトルについて、熱く語らねばならないでしょう。

2025年9月15日月曜日

Nintendo Switch 2

フツーに買えました。



Nintendoの抽選は条件が合わず「対象外」とハネられ(注1)、ゲーム専門店の抽選にハズレまくり、こりゃあしばらく我が家で姿を見ることは無いなぁ~と半ば諦めていたゲーム機、「Switch2」。

未だ抽選は当たらないし、「A○azon」に到っては、周辺機器すらフツーに買えないという始末。

そんな中、SNSなんかを中心に、家電量販店に普通に売っていた的な話を最近耳にする。

んなアホな・・・と、思いつつ、土曜日の朝、近所の量販店に行ってみる。

OPEN5分前、ちょっと早く行き過ぎたか?

見渡しても誰も並んでないし、おじいちゃんとおばあちゃんが車の中で待っているだけである。

それか、発売日が違うとか?

私も噂だけだったので、「いつ入荷して」、「いつ店頭に並ぶか」等という情報は入手していなかった。

暫くして、店員さんが軽く会釈をして登場。

自動ドアが開いた。

おじいさんとおばあさんは、チラシ掲載の特売コーナーへ消えていった。


僕は急に恥ずかしくなった。


何も考えていなかった。


単なる思い込みで、近所の店に寄ってみただけなのだ


がっくりと肩落として、店から出る姿を知り合いに見られたら恥ずかしいなぁ・・・。

ちらっとゲームのコーナーを見てみる。

ふふん、やはりSwitch2本体の箱はない。

このままゲームコーナーへ行かず、帰ってしまおうか・・・。

そう思い、もう一度ゲームのコーナーを見る。何か違和感が・・・。

そう、「Swiotch2は入荷未定」云々のチラシが貼ってないのだ!

うんっ?と思い、よ~く見てみると、Switch用のゲームの外箱ケースの中に2本並んで購入券が!!

冷静を装いながらも鼓動は大きくなる。

レジに持って行くと「会員の方ですか?」と聞かれた。

ここは、付き合いの長いお店。アプリまでケータイに入っている。

「会員です!」

胸を張って答える。そしてアプリを立ち上げ店員さんに。少々お待ち下さいと、奥に入った店員さんの胸には普段見かける事の無いゲーム機の箱が!!

今更ながらに、よく見るとマリオカートのセットだった。

そのあと普通に高校生くらいの若者が目を白黒させながらゲーム機(セットなし)を買って帰り、その日のSwitch2は完売となったようだ。

Proコン2を含め周辺機器を買って普通に帰宅。

いやぁー、田舎サイコー!


注1:言っちゃあ何だが、    僕は「Switch Lite」を持っているし、「Nintendo Switch Online」も開始当初から加入している。要は、嫁さんと子供2人はSwitchで遊びまくっているが、僕はPCとPS5で手一杯なのだ。難しいのかもしれないが、こういう時は、家族の実績もカウントして欲しいものである。

2025年9月14日日曜日

三國志Ⅱ X68000版(2)

 ユーザーの「要望」全部入れてみました


・・・実は、前回の記事からハマってしまい。
費やすこと、約半月!とうとう最後までプレイしちゃいました。

いやー、やはり光栄さんのゲームは面白いですねぇ~。
一度始めると最後までプレイしてしまう、「引力」とでも言うんでしょうか、ついついプレイしてしまい、気付けば時計の針は12時を回り、次の日の「学業」や「仕事」にも影響が・・・。
なーんてことはザラでしたねー。

こちら、「三國志Ⅱ」ですが、「前作(初代・三國志(turbo版))」に、皆がマンネリ感を覚えてきたときに丁度リリースされたのです。

最初に購入したのは、X1turbo版でした。

8bit版では、新君主に配下武将は付きません。残念!

こちらのゲームにおいても我が家で、遊びに来た友人達に多くの「中毒者」を出すこととなりました。

主な変更点

さて、今回の三國志Ⅱですが、前作の雰囲気は残しつつ、多くのユーザーからの意見のフィードバックに成功した作品であると思います。

例えば、三國志の華とも言える「武将」。
それを、相手より自分の陣営へと迎え入れる「登用(引抜き)」についてです。

三國志turbo版より。
知力100の孔明が言うと必ず引き抜けられます。

前作では軍師が「きっと我々のために~。」と言うまで、何度もリトライ出来たのですが、今作では、コマンドをキャンセルしても行動が終了した事になってしまいます。
また、「諸葛亮孔明」など、知力が100となっている武将の発言は嘘が無いのですが、それは単純に相手に対してだけの話で、自国の在野の武将でもない限り、「空白地」や「他国」の上を、「実行武将」が馬でパカパカと走ってゆくこととなります。


武将によっては、「なんと!そんな危険な国の上をっ・・・。」的なルートを通って行く者もいて、当然、捕まったり、阻止されたりする場合もあります。
なかなかOKが貰えなかった武将の気持ちがこちらへようやく向いたのに、他国の介入で阻止されてしまうのか、否か?
非常にやきもきして、面白いシステムですね。

上記のようなシステムに起因しているのか、今作では毎回その国の現役武将の頭数だけ、コマンドが実行出来るようになっています。(前作は1国につき毎月1回)。

これにより、凡庸な武将達にも存在意義が出て来ます。

戦闘システム

また、前作では知力が高い武将による「計略」「火計」のコンボが、極悪でした。
どんな猛将達でも、「計略」で動きを封じられ、「火計」を喰らうと1ターンで「焼死」か「退却」の憂き目に遇うからです。

三國志turbo版より、「計略」。
敵の行動力を減らせます。

おなじく、三國志turbo版より、「火計」。
超強力な技。Ⅰターン経過で全てを灰に!



今作は、防御側になると、割とコンピュータ側も火計を使って来ますが1ターンで「焼死」する事は無くなりました。

また、前作では、どちらかが死ぬ(武力に差があまりない場合であれば捕える場合もある)まで止められず、使いづらかった「突撃」も、使い易くなっています。

戦に関しては、今後のシリーズに受け継がれた「一騎打ち」システムの初出も今作からとなります。


相手もしくは、こちらの猛将よりの呼びかけに対して受けた武将同士に起こるイベントですが、相手に勝利すると敵を猛将+兵士の1ユニット、もしくは、受けない場合は敵兵士の一部が逃走してしまうという、攻め手に不利なこのゲームに於いて、勝利のために重要なファクターとなっています。

今回、レヴューを書くにあたり、選択した「新君主」という概念が導入されたのもこのⅡからです。
今回設定したキャラクターも、学生当時使用していたキャラクターを再現してみました。

総評

こうしてみると、前作をプレイしていて、違和感があった部分、ここは改善してくれれば・・・と、思った部分が、全てに於いて改善もしくはブラッシュアップされ、真に「Ⅱ」を名乗るに相応しいゲームとなっているのが良く分かります。

通常、ここまでの意見を反映させると収拾が付かなくなり、バランス崩壊してしまいそうなものだが、そこは「光栄」さんの看板タイトル。神がかったバランス調整で、素晴らしいデザインとなっております。

続き・・・。


曹操は死んだ。孫堅は逃げた。

こちらも、曹操にはなかなか手を出すことが出来ず、武将を何人か引き抜くにとどめて、これまで通り南方の空白地の開発・発展に務めていた。
正直、曹操自体は何とか出来る国力であったが、ギリギリで勝てる程度であれば、攻め手に不利なこの地においては、後に控える「袁紹」・「董卓」に一揉みに倒される事は目に見えている。

事態が動いたのはその数ヶ月後。
国境を大量の兵が越えてきたのだ。

旗印には「曹」の文字。
「曹操か・・・」
誰に焚き付けられたかは知らないが・・・。

火急の知らせに色めき立つ諸将たち。

「うむ。だが、どうせいずれは雌雄を決せねばならない相手ですぜ」
と、スサノオ。こういう時は本当に頼りになる。

彼は腹心の中より武将5名を厳選し、ギリギリの寡兵で出発する。

手始めに国境の砦を落とした「曹操軍」はいつになく浮かれていた。
滞在した近所の邑には、東方の島より踊り子の一団がやって来ているという。
彼らは「濁り酒」という、米を発酵させて作った酒を振る舞って、我らの勝利を祝ってくれた。

「ウズメ」(注1)と名乗ったリーダーの女が、我々の前で妖艶な舞を舞った。
「酒も・・・、旨い・・・。」
少し甘すぎる感はある・・・が、この程度では酔えんな。

そう思い、厠へ立とうとした曹操。
思いのほか足が上手く運ばない。                       
「酔いましたか?・・・「サケ」は飲み口が良いから・・・、意外と酔うんですよ。」
ウズメと一緒に踊っていた女が、駆け寄ってそう言った。
「ふふっ、しかし、やはり人間。」
「「オロチ」(注2)よりはチョロいか。」
「キサマ!!男かっ?」
「曹操っ!そのクビ貰ったァ!」
急速に光を失ってゆく曹操の目に最後に写ったのは、自分と同様に宴席で泥酔しながら死んでいく部下の姿だった。


「きゃるーん♥「貂蝉」でーす。」
「卑弥呼様よろしくねーっ。」

女性君主でもあるのですね。

「くっ・・・何度言えば分かる。私は「女」だ!」

「あっれー凱旋の時にお馬さんに乗っていたおじさんはぁ~?ぷ~!」
「あれは義兄の「スサノオ」だ・・・。卑弥呼はわ・た・し!」

「ふん、おバカなフリをして・・・。」
着物の袖口を探る。
「あ、何を!」

袖から出てきたのは刀身の短い刀。

「こんなもので人は殺せまい。」
「・・・自分用か?」
「・・・。」

「気に入らんのお。女を何じゃと思っておる!」
「貂蝉とやら。」
「は、はい?」
「ワシに仕えよ。」

「!・・・はい。」

「今後は「イヨ」と名乗るが良い。」


「卑」と記された旗が城を埋め尽くす。
中心の城には、私とスサノオ。
「とりあえずこの辺りは、平定しましたな。」
「で、地は尽きたのか?」
「いえ、ですが商人の話によると、大陸は更に続くそうで・・・。」

「決まりね。」
「はっ!」


「世界は広大だわ。」

※この物語は「Ⅱ」の、新君主システムを使用したフィクションです!このブログで歴史を覚えようなんて酔狂な人は居ないと思いますが、名称・年代等もちょっと捻った表記をしております。別に他意はありませんので、あしからずご容赦下さい

注:1 アメノウズメ:かつて「スサノオ」が手の付けられない乱暴者だった時。
岩戸に閉じこもってしまった「アマテラス」様を、踊りで魅了し、扉を開けさせた人。芸能の神様とも云われる。

注:2 八岐大蛇(ヤマタノオロチ):8つの頭と8つの尻尾を持つ蛇の怪物。かつて、生け贄にされる予定だった少女、クシナダヒメに代わり、スサノオが退治した。その際も酒を飲ませ、泥酔した所で倒したとされる。ちなみにクシナダヒメはノオの嫁さんとなった。