「ONYXヲハッツンシタ」(原文のまま)(注2)
「ウツロの街」そこは、最果ての街。
うらぶれた冒険者達が町中にあふれ。街はずれの廃墟には、蛮族やオオカミまでもが住み着き。物見遊山でやって来た新米冒険者を狙っている。
「ウツロの街」そこは、呪われた街。
街の外れには無機質な黒(緑?)い塔が立ち、街は呪いによって永遠の夜に包まれている。
「ウツロの街」そこは栄光の街。街の地下には巨大な迷宮が広がり。中には危険なモンスターがひしめいている。いつのころからか口伝に伝説が伝わるようになる。
この迷宮のどこかに、美しくも怪しい黒い瑪瑙(めのう)があり、それを手にするものはいかなる望みも思うがままだという。
今宵も数多の冒険者がこの街を訪れ、その多くが迷宮の果てへ消えていった。
この「ザ・ブラックオニキス」に初めて出会ったのは高1の春でした。
まだRPGの「ア」の字も知らなかった私は、近所のスーパーのテナントで入っていたNECのパソコンショップで、友人がやっていたゲームに興味を惹かれます。
画面には、「Kraken」と書かれたデカい緑のタコ。
棒グラフみたいなのがいっぱいあり、それが次々と真っ赤になってゆきます。
こちらが井戸の底に住み着いて多くの冒険者を 喰らってきた怪物「クラーケン」。 当時のゲーマーのある種の「壁」的な存在でした。 |
やがてタイトル画面とおぼしき画面が・・・。
どうやら、ゲームオーバーになったようで、見ると友人は渋い顔。
ゲームを再びロードすると迷宮の奥へと消えて行きました。
見ているこちらはサッパリです。一体全体グラフの増減を見るゲームのどこが面白いんでしょう?
ところが、しばらくして、我が家のX1にも、こちらのソフトがやって来ました。
我々を「クリーンコンピュータ原理主義者」へと導いた「M君」(幻のX1D所有)が、「クリアしたから」と、我が家へ持って来たのでした。
かくて我が家にも「本格」RPGなるものがやってきたのです。
この「ザ・ブラックオニキス」は、テトリスの移植で有名なBPSによるもので、ハワイのスタジオで制作されたもののようです。
いざゲームを始めてみると、本格RPGに馴染みのない日本人のために、分かりにくい部分が限りなく視覚化されている事が良く分かります。
こちらの装備に変更があれば画面上のキャラクターも変更されます。
更に、敵のキャラクタ-も全ての数が表示されます。
オオカミやコボルド、ゴブリンなどの小ぶりな敵は画面を埋め尽くす程発生しますし、逆に(クラーケンなどの)巨大な敵は1体、もしくは2体のみの遭遇になります。
クラーケンにズタボロにされ多くの犠牲者を出して しまったパーティー。全滅か!?と覚悟した生き残り メンバーの前に、2人の熟練冒険者が!! 他のゲームでは味わえない要素です。 |
魔法は次作「ファイヤー・クリスタル」(寺院が舞台)にて実装されましたが、今回はありません。
詳細は、病院に行けば見る事も出来ますが、キャラクターのLVと、装備、HPで大体推し量る事が出来ますし、むしろその方が面白いんじゃないでしょうか?
「アステカ人」これはモンスターではないような・・・? (注3) |
また、このゲームのみの面白いシステムとして、パーティーのメンバーが5人未満の場合、エンカウントした友好的な冒険者を仲間に出来ます。(但し4人の場合はソロの冒険者など、合わせて丁度5人以下にならないと、お互いに挨拶をするのみとなります。)
かくいう私もフルメンバーでー井戸に侵入し、クラーケンにボロボロにされ、2人だけ這う這うの体で脱出したのです(勿論他のメンバーは犠牲に)右も左も分からぬダンジョンで遭遇したのはフルプレートに身を包んだ戦士でした。
例え同じ冒険者でも、全く信用出来ないこの迷宮内で、恐る恐る話し掛けると、心良く仲間になってくれました。
この時に仲間になった戦士は、この後も主力の一人として大活躍し、オニキス発見(注2)の立役者となってくれました。
生還! この星空に何度癒やされた事か・・・。 「生」を噛みしめる瞬間。 |
まだ日本のRPGが黎明期だったからこそ可能であった、自由な表現。このゲームに見られる、独自のシステムは結局このゲームのみのものとなりました。
また、寺院跡を舞台にした「ザ・ファイヤークリスタル」は発売されましたが、屋外を舞台にした続編(ザ・ムーンストーン)・アリーナを舞台にした闘技大会はついに発売されることはありませんでした。
今回、このゲームを再度プレイした際、WIZ等の海外コンピューターRPGに感じた物足りなさの理由が分かったような気がしました。
それは、このゲームにしかない「ビジュアル」であり、日本人への「思いやり」でした。
注1:このゲームの夜空は黒い画面に点を打っただけの星空である。
だが、ダンジョンの深層に行けば行くほど無事生還し、見上げる星空にいくら癒やされたか知れない。街の中をうろつくアヤしい連中も含め、無機質な3D迷路の向こうに人々が息づく「街」が感じられた。
注2:このゲームラスボスは居ないが、最終ステージは人知を越えた場所での探索となる。
そこで唐突に表示されるのがサブタイトルのメッセージである。
当時はおっかなびっくりで進めていたので、(時間と共にメッセージも消える)まったくもって意味が分からなかった。
「発見した」の誤植だと気づいたのは、数刻経っての事だったように思う。
注3:Aztec=アステカ人
当時、不登校気味だった私の弟の為に放課後に学校の担任の先生もよく寄ってくれていた。ゲームを見ていて「Aztec」って?と聞かれたので教えると、「それってやばいじゃん。」と、言われていた。とても良い方で、多忙な教職の合間を縫って、生徒のフォローを忘れない方だった。
0 件のコメント:
コメントを投稿