2024年9月11日水曜日

F1スピリット

 熱き鼓動の果てに


F1spirit

年号も平成となった頃。日曜深夜。我々は熱狂に包まれていた。プロレス中継で一時代を築いた「古舘伊知郎」氏をナレーションに迎え、最速の男を決める戦いが、世界各地を舞台に開催される。しばらく見ていると、「T-SQUARE」のオープニングBGM「TRUTH」が流れ、ベストヒットUSA・ラジオのパーソナリティで有名な「小林克也」氏のタイトルコールが! 

F1グランプリ!

懐かしいですねぇ。

当時のF1の人気は物凄いものがあり、普段野球の事しか話さないようなおじさんが、「亜久里」の走りは本物か?なんて話を、スポーツ新聞片手に、おじさん同士でしているかと思えば、お姉さん方は「アイルトン・セナ」を追って、鈴鹿へと向かい、「ジャン・アレジ」と「ゴクミ」の熱愛報道に涙を流す・・・と、いった具合であった。

オトコ達は「良いクルマに乗っていなければ、女性に見向きもされない」と、思い込み、信号待ちで隣に同型車が来てもバカにされないよう、ホイール、エアロパーツ等、ドレスアップに給料を注ぎ込んだ。6discのCDチェンジャーからは、当時駆け出しだったB'zのキャッチーな音楽が途切れる事無く流れていた。

そんな時代を見逃さず、ゲームを投入して来たのはMSXの雄、コナミである。

コナミのレースゲームといえば、疑似3Dの良作、「ハイパーラリー」。見下ろし型の「ロードファイター」があるが、今回は見下ろし型である。

今更見下ろし型か?と、言うなかれ!

紛れもない「傑作」が、そこにはあった。

F1spirit
1つ1つのリアクションが、いちいちカッコいい。

F1spirit
スタート時の画面、コマンドを選択すると
パスワードの入出力が出来たりします。

ゲームをスタートしたら、いきなり、SCCによる軽快なBGMが!

この頃になると、音源を使いこなしていたコナミは、このゲームでも傑作BGMを惜し気もなく投入して来る。

特にメインテーマのF1sprit(F1のBGM)は傑作で、現在でも通勤中車内でCDを聞く事があるほど!

(ただあくまで噂だが、開発の際に音源チップが間に合わず、チャンネルが増えるとだけ判ったので、サウンドスタッフは2台のMSXを並べて音楽を制作したとか・・・。恐るべしコナミのスタッフ!因みにこのゲームの未使用曲がA-JAXに使われたという噂も・・・。)

ゲームは、1人のドライバーの成長をテーマにしている。


F1spirit
いよいよ、あなたのレース人生の始まりです。


F1spirit
こちらはF3。

プレイヤーは、いきなりF1パイロットとはなれず、「ストックレース」(注1)「ラリー」(注2)「F3」(注3)からレースを選んでスタートする。

各レースで、それぞれ良い成績を修めると、更に上のカテゴリー「F3000」(注4)「エンデュランス」(注5)が登場。更にこちらをクリアして初めて、「F1パイロット」(注6)となれるのだ。

各カテゴリーを選ぶと、完成品の車から選ぶか、各パーツの組合せをどうするかが出る。


F1spirit
1を選ぶと完成品。2を選ぶと各パーツ選択に。


F1spirit
こちらはパーツ選択画面。最強が必ずしも良いものとは限りません。

パワーの高いパーツを選びがちだが、燃費が悪くなったりピーキーになったりと、逆に難易度が上昇する。初心者は、燃費が良いエンジンがあるので、レース中ピットインしなくて済むものをを選ぼう。それでも十分レースには勝てる。


F1spirit
対戦プレイ画面。舞台はラリー。大荒れの予感。
あと、看板を見ていただきたいのですが、さり気なく
傾斜角度が変わっています。演出が細かい!

また、このゲーム、対戦プレイがアツい!

画面いっぱいに2コース表示され、それぞれが別々にスクロールするという、スゴい技術。

クリア後も接客ソフトとして長期に渡って活躍しました。


F1spirit
こちらはF1第15戦の鈴鹿です。
コースの順番も当時に準じています。

更に、フォーミュラカーらしき物が登場しただけで、F1レースの名を冠したソフトが多かった当時、F1全16戦再現した革新的なゲーム。


F1spirit
ゲーム中は一瞬ですが、立体交差があります。

このソフトは、果敢にサーキットの再現に挑戦し、例えば日本なら鈴鹿だが、特徴的な立体交差まで表現されている。


F1spirit
ピットです。ボタンを連打すると超優秀なクルーが
どんな破損でも直してくれます。

「PIT」と書かれた場所に停車すれば、ちゃんとクルーが駆け寄って来てマシンのメンテナンス&給油を行い、ライバル(青い車)まで設定されている。

こうしてみれば、ストイック過ぎるレースゲームに思えるかもしれない。

そこは、そういう事をあまり意識させず、絶妙なバランスで「ゲーム」にまとめあげるコナミのセンス。

レベルの低いカテゴリーから出発することにより、プレイヤー自体もゲームに慣れ、F1に搭乗する際には、違和感なくマシンをコントロールする自分が居ました。

特にF1のハイスピードでの疾走感は、見下ろし型の2Dゲームとは思えない、こゲームでならではの感覚。

クラッシュ(注7)を上手く回避し、コースを走り込み、ライバル(注8)を下した者だけに勝利の女神は微笑む。


F1sprit
感動のエンディング(一部)

あなたは、勝利を掴み感動の表彰台(エンディング)に立つ事が出来るのか?



注1:市販車ベースのレース。アメリカの「NASCAR」等がモデル?

注2:WRCとかが有名。悪路を猛スピードで疾走する魅力的なレース。詳しくは、「新谷かおる」先生の名作「ガッデム」全5巻(文庫版は全4巻)を読むべし!

注3:「フォーミュラ3」 F1・F2の下のクラス。

注4:現在では開催されていない。F1直下のクラスだった。

注5:耐久レース。「ル・マン24時間」等が有名。因みにコースは「ル・マン24時間」が開催される「サルト・サーキット」に似ている。

注6:最近ではドライバーが一般的か?マニュアルにあるように、F1ターボ時代「羽を付ければ空を飛ぶ」といった、ハイパワーマシンを操る者達に敬意を表しての言葉だったとか・・・。

注7:このゲーム、クラッシュや接触で燃料の減少及びパーツの破損(タイヤ・ブレーキ・エンジン)が起こる。それを回復させる手段として「PIT」と書かれた場所に停車するとクルーが駆け寄って来てサービスを受けられる。作業はボタン連打でスピードアップするが、クラッシュしないに越した事はない。

注8:結構しつこく絡んで来る青い車。実はライバルという設定。F1に行ったら、わりと早々に姿を消す事が多いようだが、それまでは突然追い抜いて行ったりと、ミスを誘って来る。チャンスがあれば、お尻をツンツンして破壊!?しても良い。

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