2024年11月15日金曜日

ソフトベンダー武尊

 俺を見るなぁぁっ!



・・・と、声を上げてその場から逃げ出してしまいたい。そんな思いをぐっとこらえて、ただひたすらに待つ。そう、それは忍耐の世界。
そして、その思いに耐えきった者だけが栄光という名の「ゲーム」を手に入れる事が許されるのだ。

1986年まだ「パソコン通信」なるものが、金持ちのお坊ちゃまの趣味の域を超えず、ちょっとチャットしただけで猛烈な料金が発生していた時代の話である。(知人のK君はモデム付きのPC-8801mk2TRで親の給料が吹っ飛ぶ程チャットをしたとか・・・。そんな悲劇は我が田舎町でも多く語られていた。)

そういう時代の中、ミシン等で有名だった「ブラザー工業」より、画期的な発表があった。
何とパソコンのソフトを、自動販売機で売るというのだ。
しかも、ソフトは通信で送られて来るという。
つまり、「品切れ」などというものが無いのだ!(田舎なので、パソコンのソフトが、まずそんな事態になった事は無いが・・・。)

自販機の名前は「武尊」(タケル)!
うーん、正直ダサ格好いい?ネーミングである。
(※のちにローマ字でTAKERUと改名)

早速、ラインナップが!


おお!あの「アスピック・スペシャル」も、「武尊」の専売なのか!
話の種に一度は行かねばなるまい。・・・と、Ryo君と物見遊山でソフトを買いに出掛けたのだが・・・我々は重要な事を見落としていた。

「武尊」君の居場所である。

我が県唯一の、「武尊」君は、駅前の商業施設内しかも、パソコンのパの字も無いような、アパレルショップばかりが営業するフロアのド真ん中に鎮座しておられた。
無論、パーディションなどという気の利いたアーマーは存在せず。


付近を闊歩する小粋なねーちゃん達の好奇の目に耐えながら(注1)、マニュアルをプリントアウトしたり、ディスクを書き込んだりしなければならないという。
童貞男子にとって、公開処刑場に近い場所だった。

何故にこんな場所に!?
通常は常時パソコンを置いてある、電気店何かにあるんじゃねーか?
などとぶつくさいいながら、機械に接近。
とにかく、「武尊」専売ソフトというのは、逆に言うと「そこ」へ行き、生還した猛者のみが遊べるという事。

覚悟は決まった。
Ryo君とアイコンタクトを取ると、「さも、当然。」と言わんばかりに機械へ近づいて行った。

が、我々は愕然とすることになる。
しばらく、偵察と称して、フロアを見回っていた我々の目に映ったのは先客の姿だった。
しかも、今始めたばかり。
電車に乗って帰路につく頃には、いつもよりどっと疲れた我々。

因みに、大学時代住んでいた街でも「武尊」はありましたが、やはり、オシャレな商業ビルの一角(注2)にあったのを記憶しています。


まあ、その頃になると女性店員さんが居る本屋さんのレジに、平気でエロ本を持って行けるくらい図太くなってましたが・・・。



PS.さて、こちらの武尊ですが、ワリと我々はお世話になった記憶がありますね。
「ソーサリアン」のファルコム社外のシナリオとか、「セレクテッドソーサリアン」とか。X68kでは「宝魔ハンターライム」シリーズとか・・・。
その技術は後の通信カラオケでも利用されているとか。

注1:人はそれを「被害妄想」と、いいます。

注2:ここらへん何かの業者繋がりで・・・というのがあったのでしょうか?

2024年11月12日火曜日

クリスタルソフト

 ニッポンのRPG

クリスタルソフト

まだ、日本のコンシューマ向けPCに、ウイザードリィも・ウルティマも移植されていなかった頃の話。
まだ、RPGというものが具体的にどんなものか、何を基準に作れば良いのかどこのメーカーも具体的には分からなかった時代。

あるメーカーはアクションで。

T&Eソフト

あるメーカーはアーケードで

ナムコ

ナムコ


あるメーカーは視覚化で

BPS

だが、ここにRPGというゲームに強いこだわりを持ち、愚直なまでにRPGのみを作り続けたメーカーがあった。
その名を「クリスタルソフト」。
以前、このサイトでもレビューさせて頂きました「ファンタジアン」・「夢幻の心臓Ⅱ」を世に送り出した会社である。

夢幻の心臓Ⅱ X1

こちらは「夢幻の心臓Ⅱ」。
当時のソフトとしては「ファンタジアン」も含め、頭一つ抜けた感じで、非常に遊びやすかった。
特にX1版は他機種のような単色と違い、背景の重ね合わせ処理・多色のキャラクターなど、ビジュアル面でもアドバンテージがあった。

リザード(MSX版・マイクロキャビンが移植)
こちらは打って変わってアップテンポなRPG「リザード」です。BGMが常に流れているわけでは無いのですが、何かする度に「♪チャッ、チャー♪」などと音楽が流れます。リアルタイムっぽい戦闘といい、「和風・極彩色RPG」とでも言ったら良いでしょうか?

Lizard MSX

ダンジョン系RPGですが、明るいノリであっという間にクリア出来てしまいます。これは意外な楽しさでした。

Lizard X1

Lizard X1

MSX版をプレイ中にX1版も発売。更に豪華に、派手になりました。
こちらも買うしか無いでしょう!

Aspic SP X1

「リザード」の続編にあたる「Aspic」です。
極彩色RPGの面目躍如!
FM音源による派手なオープニングBGM
意外にも辛口なストーリー。

Aspic SP X1
戦闘は、更にパワーアップして、それぞれの
モンスターと直に闘えます。

そして、キレの良いゲーム性と、前作の持ち味は上手く継承され、パワーアップしています。

クリムゾン

グラフィックは某RPGに類似しているんですが(「夢幻の心臓Ⅱ」の逆パターン?)、独特の世界観はやはりクリスタルソフト!
「クリムゾン」

クリムゾン

敵キャラクターの、おどろおどろしい所はクリスタルソフトらしいところですね。

アドバンスド・ファンタジアン

X1最後の作品にして、最高のシステムを持った作品。クリスタルソフト、長年の研究の成果を垣間見たような気がした、「アドバンスド・ファンタジアン」!

アドバンスド・ファンタジアン
戦闘シーンは奥非常に奥深い。その代わり
ランダムエンカウントは、ほぼ無い。
タクティカルコンバットで、ここまで楽しいとは!

RPGというものが、テーブルトークの再現を究極の目的にしているとすれば、このゲームは正にその回答そのものではないだろうか。
惜しむらくは、やはりシナリオの短さであろう。
実に惜しい。
エディターのようなものが出ていれば、さらに、シナリオデータを自由にやり取りできる環境があれば、D&Dに匹敵するゲームにすらなるポテンシャルを秘めたゲームと言って良いと思う。

クリスタルソフトはこののち88向けに数本ゲーむを発売した後、T&Eソフトに吸収・合併され、開発の1部門となり、同ブランドにて安田均とグループSNE原作の「ソードワールドPC」という、RPGを開発している。

2024年11月11日月曜日

ザ・ブラックオニキス X1版(テープ版)

 「ONYXヲハッツンシタ」(原文のまま)(注2)

The Black Onyx X1


「ウツロの街」そこは、最果ての街。
うらぶれた冒険者達が町中にあふれ。街はずれの廃墟には、蛮族やオオカミまでもが住み着き。物見遊山でやって来た新米冒険者を狙っている。

「ウツロの街」そこは、呪われた街。
街の外れには無機質な黒(緑?)い塔が立ち、街は呪いによって永遠の夜に包まれている。

The Black Onyx X1

「ウツロの街」そこは栄光の街。街の地下には巨大な迷宮が広がり。中には危険なモンスターがひしめいている。いつのころからか口伝に伝説が伝わるようになる。
この迷宮のどこかに、美しくも怪しい黒い瑪瑙(めのう)があり、それを手にするものはいかなる望みも思うがままだという。

今宵も数多の冒険者がこの街を訪れ、その多くが迷宮の果てへ消えていった。

The Black Onyx X1

この「ザ・ブラックオニキス」に初めて出会ったのは高1の春でした。
まだRPGの「ア」の字も知らなかった私は、近所のスーパーのテナントで入っていたNECのパソコンショップで、友人がやっていたゲームに興味を惹かれます。

画面には、「Kraken」と書かれたデカい緑のタコ。
棒グラフみたいなのがいっぱいあり、それが次々と真っ赤になってゆきます。

こちらが井戸の底に住み着いて多くの冒険者を
喰らってきた怪物「クラーケン」。
当時のゲーマーのある種の「壁」的な存在でした。

やがてタイトル画面とおぼしき画面が・・・。
どうやら、ゲームオーバーになったようで、見ると友人は渋い顔。
ゲームを再びロードすると迷宮の奥へと消えて行きました。

見ているこちらはサッパリです。一体全体グラフの増減を見るゲームのどこが面白いんでしょう?

ところが、しばらくして、我が家のX1にも、こちらのソフトがやって来ました。

我々を「クリーンコンピュータ原理主義者」へと導いた「M君」(幻のX1D所有)が、「クリアしたから」と、我が家へ持って来たのでした。

The Black Onyx X1

かくて我が家にも「本格」RPGなるものがやってきたのです。
この「ザ・ブラックオニキス」は、テトリスの移植で有名なBPSによるもので、ハワイのスタジオで制作されたもののようです。
いざゲームを始めてみると、本格RPGに馴染みのない日本人のために、分かりにくい部分が限りなく視覚化されている事が良く分かります。

The Black Onyx X1
画面を覆い尽くすゴブリンの群れ。併せて15体。
敵もこれだけ居たらと襲いかかって来ますが、
こちらのレベル・装備の前には敵ですら無いのでした。

例えば自身のパーティーの全キャラクターは画面に表示されています。
こちらの装備に変更があれば画面上のキャラクターも変更されます。
更に、敵のキャラクタ-も全ての数が表示されます。
オオカミやコボルド、ゴブリンなどの小ぶりな敵は画面を埋め尽くす程発生しますし、逆に(クラーケンなどの)巨大な敵は1体、もしくは2体のみの遭遇になります。

The Black Onyx X1
クラーケンにズタボロにされ多くの犠牲者を出して
しまったパーティー。全滅か!?と覚悟した生き残り
メンバーの前に、2人の熟練冒険者が!!
他のゲームでは味わえない要素です。

パラメータなどの表示は非常にシンプル。敵も味方もHP(味方のキャラにはHPの下に水色でEXP表示がある
)のみという潔さ。
魔法は次作「ファイヤー・クリスタル」(寺院が舞台)にて実装されましたが、今回はありません。
詳細は、病院に行けば見る事も出来ますが、キャラクターのLVと、装備、HPで大体推し量る事が出来ますし、むしろその方が面白いんじゃないでしょうか?

The Black Onyx X1
「アステカ人」これはモンスターではないような・・・?
(注3)

また、このゲームのみの面白いシステムとして、パーティーのメンバーが5人未満の場合、エンカウントした友好的な冒険者を仲間に出来ます。(但し4人の場合はソロの冒険者など、合わせて丁度5人以下にならないと、お互いに挨拶をするのみとなります。)
かくいう私もフルメンバーでー井戸に侵入し、クラーケンにボロボロにされ、2人だけ這う這うの体で脱出したのです(勿論他のメンバーは犠牲に)右も左も分からぬダンジョンで遭遇したのはフルプレートに身を包んだ戦士でした。
例え同じ冒険者でも、全く信用出来ないこの迷宮内で、恐る恐る話し掛けると、心良く仲間になってくれました。

The Black Onyx X1

こうして、多くの犠牲を払いながらも星が見える地上(注1)に生還を果たした我がパーティー。
この時に仲間になった戦士は、この後も主力の一人として大活躍し、オニキス発見(注2)の立役者となってくれました。

The Black Onyx X1
生還!
この星空に何度癒やされた事か・・・。
「生」を噛みしめる瞬間。

まだ日本のRPGが黎明期だったからこそ可能であった、自由な表現。このゲームに見られる、独自のシステムは結局このゲームのみのものとなりました。
また、寺院跡を舞台にした「ザ・ファイヤークリスタル」は発売されましたが、屋外を舞台にした続編(ザ・ムーンストーン)・アリーナを舞台にした闘技大会はついに発売されることはありませんでした。

今回、このゲームを再度プレイした際、WIZ等の海外コンピューターRPGに感じた物足りなさの理由が分かったような気がしました。

それは、このゲームにしかない「ビジュアル」であり、日本人への「思いやり」でした。




注1:このゲームの夜空は黒い画面に点を打っただけの星空である。
だが、ダンジョンの深層に行けば行くほど無事生還し、見上げる星空にいくら癒やされたか知れない。街の中をうろつくアヤしい連中も含め、無機質な3D迷路の向こうに人々が息づく「街」が感じられた。

注2:このゲームラスボスは居ないが、最終ステージは人知を越えた場所での探索となる。
そこで唐突に表示されるのがサブタイトルのメッセージである。
当時はおっかなびっくりで進めていたので、(時間と共にメッセージも消える)まったくもって意味が分からなかった。
「発見した」の誤植だと気づいたのは、数刻経っての事だったように思う。

注3:Aztec=アステカ人
当時、不登校気味だった私の弟の為に放課後に学校の担任の先生もよく寄ってくれていた。ゲームを見ていて「Aztec」って?と聞かれたので教えると、「それってやばいじゃん。」と、言われていた。とても良い方で、多忙な教職の合間を縫って、生徒のフォローを忘れない方だった。

2024年11月4日月曜日

トンネルdeセッション(2)

進捗報告

Ryo

あの発表より数ヶ月。
企画はどうなったの?と、Ryo氏のチャンネルやら、こちらのサイトやらを行ったり来たりして、「まだかなぁ~。」と、思われていた皆様。進捗報告が遅くなりまして、大変申し訳ありませんでした。
お互い、仕事を持っているのと、企画の発表を私が先走り過ぎた為に、皆様にご心配と、関係各位に要らぬご負担を掛けてしまいました。

重ねてお詫び申し上げます。

さて、企画の方ですが、ポシャっていたワケでは無く、進行中です。

先日、彼のスタジオを訪ねた際の動画をご覧下さい。


Ryo氏本人よりメッセージも頂きました。


彼曰く、スナッチャーの舞台となった「クリスマス」の動画投稿を目指しているとの事。
ご期待下さい!

また、Ryo氏のチャンネルではリクエストを受付中だそうで。
また、渋めのサックスの音が心に響いた方、チャンネル登録・高評価お待ちしていますとの事です。

2024年10月28日月曜日

源平討魔伝

売られた喧嘩は買わねばなるまい・・・

電波新聞社
起動直後FDが排出されてビックリ!
何と、ゲームはオンメモリです!!

恥ずかしながら、このゲーム、X68000(以下X68k)版を実際に見るまで、稼働している姿を見た事ありませんでした。

こんな私が何を言ってるんだって感じですが、X68k版について語りたいと思います。

以前もお話しましたが、「ゲームセンターでインベーダーゲームをしてはいけない」と、本気で生徒手帳に書かれているような地方のマイナー高校の周辺には、インベーダーどころかバクテリアンすら存在せず、最新のゲームに触れるには、友人たちと電車で数駅先の県庁所在地へ映画でも見に行った際に時間つぶしに寄ったゲーセンに、あれば遊ぶといった感じでした。
よって、サイクルの早いマイナーなテーブルゲーム等は、こちらの知らない内に新しい基盤へと移ろっているという事も珍しくなかったです。
○○のゲーセンに、「沙羅曼蛇」があるらしい、××のゲーセンにSEGAの「R360のアフターバーナー」がと、情報は入るのですが、主な移動手段がチャリという高校時代はゲームの為に、そこまで出張っては行けませんでした。

そんな中、またしても電波新聞社がX68kにて、新なブレイクスルーを起こそうとしていたのです。

何とあの「源平討魔伝」をX68kに移植するという話です。

電波新聞社

「源平討魔伝」は鎌倉時代を舞台に、滅びた平家の恨みを晴らすべく、主人公=「平景清」があの世から復活し、「弁慶」・「義経」といったボスキャラと戦いつつ、「頼朝」(!)のいる鎌倉を目指すといったストーリー。
と、ストーリーも仰天ならば、ゲーム内容も仰天の演出。
各キャラクターは音声取り込みで、喋りまくりますし、音楽も超ド派手。

電波新聞社
横スクロールモード

電波新聞社
BIGモード(ボスキャラ戦)

電波新聞社
平面モード

ゲームはトップビューで歩き回れる平面モード・マリオのような横スクロールモード・巨大なキャラクターが画面狭しと暴れまわるBIGモード(ボスキャラ戦)、の3つのモードで構成されています。

電波新聞社

横スクロールモードでも竜が暴れ回ったり、山の向こうから、「戯れは終わりじゃ!」と、巨大な頼朝が現れて景清を、これまた巨大な笏でバシバシと叩いてきたり、はたまた全編ダジャレの「ダジャレの国」があったりとプレイヤーを飽きさせません。

電波新聞社
こちらは義経さん。こんなキャラだったんですか?

また、BIGモード(ボスキャラ戦)では、突然虎が飛びかかって来たり、琵琶法師が鳥獣戯画?(毒キノコ)を投げて来たりと、独特な日本感が炸裂しまくっています。

電波新聞社

電波新聞社
先ず、「京都」を目指しましょう。
そこまでは前座だと言って良いでしょう。

各ステージは「鳥居」によって分岐・繋がっており、(時には隠れていたり、横スクロールモードでは最初の鳥居の更に向こうに別の鳥居があったりと)こちらを上手く選択することが攻略のキモとなっています。

ナムコット
こちらはファミコン版。
「ボードゲーム」の文字が・・・。

ナムコット
これは、これで楽しそうな気も・・・。

ナムコット

移植の第一弾はファミコン版(注1)でしたが、雰囲気の再現すら困難だったのか、全く別のRPG(タイトルにはボードゲームと表記)みたいな感じで移植された当ゲーム。
現代ならアーケードと家庭用機の性能差は限りなく低くなっていますが、当時はX68kを以てしてもその差は埋めがたく、プログラマーの技量が試される場面が多くありました。

電波新聞社
淡路はボーナスステージ。こちらで、なるべく
主人王の能力を上げておきましょう。

そんな中、「ア〇キー」刊のパソコン誌「Log〇n」のX68kのコーナにこんな記事が掲載されました。
(当時の雑誌を実家で漁ったんですが、発見できなかったので自分の記憶の要約になります。間違っていたら申し訳ありません。)

電波新聞社
こちらは砲丸投げ(?)弁慶さん。
この後、本当に「ぶんぶん回す」方も登場。

要約するとBIGモードの弁慶の鉄棒をグルグル回すシーンは専用基盤を使っているので絶対再現不可能だろうからスパっと諦めて、別の演出を検討したほうが良いでしょうね・・・的な内容だったと思う。

こちらに強く反発したのが「電波新聞社」の開発陣。
遂に完成となった「マイコンBasicマガジン」1988年5月号の完成・レビュー記事に於いて、「噂が流れて実現が心配された、あの「ぶるんぶるん」鉄棒を振り回す弁慶だって平然とした顔で暴れまわっています。」と、チクリ。

電波新聞社
相変わらず傾いてしまって、申し訳ありません。

喧嘩を売られたので買った・・・だが、それだけなのでしょうか?

この「源平」に於ける「神移植」こそが、電波新聞社、およびサードパーティーの移植に於ける新たな「マイルストーン」となったのではないでしょうか?

電波新聞社に「塩を送った」アスキー、それに技術のブレイクスルーで答えた電波新聞社の開発陣。

これを機に、電波新聞社のX68kに於ける移植度は飛躍的に向上し、名作「ドラゴンスピリット」・「ファンタジーゾーン」等、「完全移植」の上に更に付加価値を乗せた商品をリリースし続ける事となるのです。

つくづく、いい時代だったのですね~




注1:「源平」の移植版を語る際どうしてもハズせないのが、コナミからリリースされたソフト「月風魔伝」(ファミコン版)です。

コナミ

コナミ

コナミ

僕もイイ大人ですから、皆までは言いません。
でも、似てますよね?(爆
しかも出来が良い。
「ナ○コ」さんは、心穏やかではなかったと思います。

2024年10月19日土曜日

X68000 XVI(CZ-634C)

ヤツのパソコンを超えろ!

Sharp X68k

話を少し前に戻そう。
時に1986年の事である。
シャープ系「クリーンコンピュータ原理主義者」なら必ず観なければならないTV番組「パソコンサンデー」にて、とんでもないスクープが飛び出した。
当時どの会社のマシンでも再現不可能だった、コナミのグラディウスが4オプションで動いている。
完全再現を目指して開発されていたそれは、担当者にして、「1ドットでも違ったら腹を切る。」と言わしめる程 (注1)の拘りを持って作られているという。
鳴り物入りで発売されたTurboZ(注2)の存在を吹き飛ばす程のインパクトを、シャープユーザーのみならず、日本のPCユーザーに与えたTV事業部(注3)乾坤一擲の作「X68000」の登場である。
パーソナルワークステーションと銘打たれたその機体にはその実、「ワーク」では無く最新の「ホビー」が所狭しと詰まっていた。当時、ニューヨークにあったツインタワーを彷彿とさせる「マンハッタンシェイプ」。一度据えたらなかなか使う事のないキャリングハンドル。
アフターバーナーで初めて使用した人も多い?
トラックボールにもなるマウスとか。

凄い!」・「欲しい!」・「でも、買えない・・・。」
その、3フレーズが瞬時に日本中に溢れたに違いない。
当時の私は、大学進学が決まった、只の高校生である。これから、4年間親のスネを噛りまくるのに。モニターコミで約50万のパソコンなど夢のまた夢である。

まあ、しばらくTurboで遊ぶさと、夏休みに帰省した私の耳に、とんでもないない話が飛び込んで来た。

当ブログで既にお馴染み、常に一歩先を行く男、「Ryo」君が「X68000」を買ったというのだ。

矢も盾もたまらず、彼の家を訪ねた私の網膜にグレーの「マンハッタンシェイプ」が写し出された。

「よっ!」
勝ち誇った彼の声。
膝から崩れ落ちる私。
完敗だ。

・・・。
いや。
この際、勝ち負けは関係無い。
「ゲーム、ゲームを見せてくれぇ~。」
情けなく懇願する私に彼は、シャープのロゴが入った1枚のFDを見せてくれた。マシンのスイッチを入れ、それをドライブにセットする。
ウィーンと、小さな音がしてFDが吸い込まれて行 く。
おお、X68000はこんなところも自動なのだ。

やがて、X68000のロゴの後に、AppleのマッキントッシュのようなオシャレなGUIが。
何か、よくわからんけど凄い!

よく見ると中にGのマークのアイコンが!Ryo君が慣れた手つきでマウスを動かし、起動する。

Sharp X68k
良くも悪くもX68000のマイルストーンになった一本。
基盤と筐体を買う人もいたので、将来性を考えたら、
「超格安」という考え方もある。

Sharp X68k
コンシューマー版では、火山の噴火が終わると、一端
スクロールしビッグコアが現れる場合が多かった。
こちらは、ちゃんとその場でスルッと登場。感動した!

おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
凄い!スゴ過ぎるぜぇ!
未だハードウエアスクロールやスプライトすら装備していないPCが多い中、このマシンは潔いほどの割り切り具合。
「ゲーミングPC」なんて影も形も無い時代である。(注4)
そして、彼が他に所有していたのが、

Sharp X68k

Sharp X68k
意外に思うかもだが、PC版のXEVIOUS移植はここに
至るまで厳しいものがあったのも事実。(MSX2版除く)

「X」の名を冠するPCを所持するのであれば、買って動作を確認せねばならない。
「ゼビウス」
Ryo君曰く、もう「動いて当然」の世界との事。

Sharp X68k

Sharp X68k
画面も凄いが音楽も凄いのである。

「蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン」ユーラシア大陸統一とういう「光栄歴史3部作」屈指のスケールを持つ作品。超破天荒な姫様「ラッチ」さんの登場で、モンゴル編から始めたプレイヤーは、かなり有利に??
X1版が霞んでしまう、サウンド・ビジュアルショック!

という事で、時にRyo君宅で、最新のゲームを見せて貰っていた我々であったが、徐々に異変が起き始める。
友人の「 I 」君がACE-HDを、「 T 」君がProを購入したのだ。

こうしてX68000包囲網が出来上がって行く様を指を咥えて見るしかなかった私。
しかし、1991年、無事就職をさせていただき、給料というものが手に入る年代に。

そして無事に、(現代だったらあり得ないが)超過酷労働&超高額報酬の「虎の穴」的な施設に派遣も決まり、入社Ⅰ年目にして、当時発売されて間もないX68000 XVI(エクシヴィーと読む・16Mhzのクロック周波数に由来すると思われる)を購入。
既に入手していた専用アナログモニターと合わせ、X68000中興期の一翼を担うこととなる。

子供の頃は親を見てこう思った時もあった。
「ゲームやアニメ・マンガ・プラモなんかは、大人になれば卒業しているのだろう」と・・・。
・・・とんでもない話である。
会社で「一般人でございます」的な立ち位置の人も、僕が「その筋」の人と見るや、急に本音を出してくる。

どの人も、どの人なりに「こじらせ」ているのであった。

そして、我々は更なる16ビットゲームの世界へと墜ちてゆくのであった。




Ps.今回で50回目の記事になりました。無事キリ番となる回を迎える事が出来ましたのも、友人を含め、このページを訪れていただいている皆様のお陰であります。今後も自分流のゲーム愛について語って行く所存です。今しばらくお付き合い戴ければ幸いです。

2024年10月19日 Astronauts


注1:当時、担当者は「1ドットでも違ったら腹を切る。」とは、言っていなかったらしい。これはのちの「パソコンサンデー」でも否定された。まあ、それくらいの気概を持って仕事をしていただいたということだろう。確かに凄い移植である。

注2:X1TurboZ。
発表当時、「Z」は「ゼータ」と発音するのでは?だったら、後継機は「ZZ」「ダブルゼータ」?・・・といった話題が「oh!mz」(oh!X)誌上で盛り上がった。

注3:シャープという会社は、コンピューター部門に於いては「NEC」・「富士通」に比べれば、巨人の前の蟻であると揶揄される。そんなシャープのしかもコンピューター部門ではない、TV事業部から生み出されされたのが「パソコンテレビX1およびX68000シリーズ」などの「CZ」シリーズである。
ちなみに、コンピューター部門のマシンは「MZ」シリーズである。

注4:海外にはコモドールの「Amiga」というマシンがあり、時に「X68000」を「和製Amiga」と評する向きもあるが、実際のユーザーとして異を唱えたい。