2025年6月4日水曜日

ゴーファーの野望 episodeⅡ


「ジェイムス・バートン」死す!



ラーズ18世の崩御より約100年(グラディウス歴)。



曾祖父(ジェイムス)の影響で、軍学校に入った俺は、親父には発現しなかった高い「リークパワー」を認められ、かつて曾祖父も在籍したという宇宙軍への入隊を果たした。

77歳という我々の高度な医療技術をもってしても早すぎる死は、陛下の生きた激動の時代を物語っているようであった。

よく、父や母が語ってくれた曾祖父の伝説を思い浮かべ、主星グラディウスへのシャトルに揺られていた。




そう、それは一人の戦士の物語。



一介の兵士から、スペースファイターのパイロットとなり、第一次バクテリアン戦争ヴェノム反乱サラマンダ軍襲来(第二次バクテリアン戦争)と現在の平和の礎となった戦いではいつも彼の姿が天駆けるスペースファイターと共にあったという。




折しも第二次バクテリアン戦争より百年、今年は18世の子孫としてではなく、宇宙軍関係者として「平和式典」に参加できる。

式典が終わり、久々に両親の住む実家へと引き返そうとした私を、見知らぬ男性が引き留めた。

「デヴィット・バートンさん?」

「はい?」

「ラーズ18世に大変お世話になっていた者です。」

曾祖父の影響もあり、軍関係の猛者達には割と顔の利く方だが、見覚えが無い。顔立ちも「制服組」というより、「背広組」といった感じか?

「どうです?この後?」と、男はグラスを持つジェスチャーをする。


「18世も、酒にはうるさい方でして・・・。」

訳知り顔で語る男。通されたバーは割と落ち着ける雰囲気の良い店だった。

「長寿保証遺伝子ですか?」

「平和を得て百年の時が経ちましたが、当時の記憶も失われつつあります。」

「・・・。」

「なかなか、楽にはなれませんな。」

所謂、「不老不死(メセトラーゼ)」というやつだ。掛かる費用も莫大なため、政府でも一部の「要人」しか施されていないというが、それを差し引いても必要な才能の持ち主なのだろう。

「18世の時は宇宙軍でしたが、現在は諜報部でして」

おもむろに男が端末を差し出す。

「我々の恒星系のエッジワース・カイパーベルト周辺。映像は2日前です。」

画面は大昔の「ビデオゲーム」の様な漆黒の宇宙。が、刹那、空間が歪む。

「特異点です。」

突然、空間一杯に爆発のようなものが・・・。いや、これは!

「人工太陽です。」




「!!」

「おそらくバクテリアンの。」

「軍は、どうなっている!」

「もちろん、特異点が現れた時点で、スーパーサーベルタイガー・スーパースラッシャーの二個大隊を偵察に出しました。・・・隊員は全員「二階級特進」となりましたがね。」

「!!」

スーパーサーベルタイガー・スーパースラッシャーといえば、宇宙軍の誇る主力スペース・ファイターだ。

「多くの貴重なパイロットの命と引き換えに、得られたのがこの「映像」と、敵の通信の一部を解読した「ゴーファー」という言葉のみです。」

「くっ、しかし、どうする!?」

「VIXEN(ヴィクセン)。」

不適な笑みを浮かべて確かに男はそう言った。





全身が総毛立つ心地だった。

「24時間以内に発艦可能です。」

「しかし、予算の削減のための妥協案として、サーベルタイガー・スラッシャーの改修にとどまったのでは?」

「それは、「戦争」を知らぬ政治家のタワゴトですな。」

「では行きましょうデヴィット!アナタの乗機が待つ秘密基地へ!」

「おおっ!ついにあの機体に乗れるのか・・・って、おい!!

「シリアスっぽいストーリーでついつい、俺もノッちゃったけど、何でパイロットが俺って決まってんだ?」

「ジイちゃんや、親父、お袋に良く言われたっけ。曾祖父である「ラーズ18世」は、所謂「お調子者」で、人から担ぎ上げられたり、若い女の子にキャーキャー言われると、ついつい酷いミッションでも出撃していたって!」

「で、余りに無茶な作戦過ぎて随伴機も付いて行かず、ワンマンアーミー状態で、気付けば敵地。命からがら根性でミッションクリアし帰還すれば、持病の痔は再発するわ、リークパワーをマシンに吸われ、抜け殻の様になるわ・・・。」

「曾祖父が早死にしたのも、その所為だと親父やオフクロが言ってたぜ。」

「後宮・・・。」(ボソッ)

「うん?」

「後宮です。何故、アレほどの劇戦地へ皇帝は向かわれたのか?使命感?正義感?・・・違います。」

「解りますか?「ラーズ20世」・・・いや、将来の陛下!

「陛下・・・。俺が・・・。」

「いいですか。皇帝になった暁には、妙齢の美女揃いといわれている「後宮」も貴方のものとなるのですぞ!」

「妙齢の・・・美女・・・、揃い・・・。」

俺の心の中で何かが弾けた。



「何をしている!行くぞ!」

「おおっ?」

「バクテリアか・バイ菌か知らねえが、俺とヴィクセンの敵じゃあねーぜ」

オラオラオラ!!

出撃だぁっ!!


・・・

・・

「・・・行ったか?」

「はっ」

「まさかこうも簡単に堕ちるとはな。高い金だったが、貴様を生かしておいて正解だったよ。」

「はっ、光栄であります!」

「これで予は、この重責と、後宮の婆さん共から解放される。心から礼を言う。」





「ありがとうございます「皇帝陛下」!いえ、「ラーズ19世様」


(2)へ続きます。


注)この物語はフィクションであり、よく似た名前の人々が登場しますが、㈱コナミ様制作の「グラディウス」シリーズとは、一切関係ありません。

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