2024年11月15日金曜日

ソフトベンダー武尊

 俺を見るなぁぁっ!



・・・と、声を上げてその場から逃げ出してしまいたい。そんな思いをぐっとこらえて、ただひたすらに待つ。そう、それは忍耐の世界。
そして、その思いに耐えきった者だけが栄光という名の「ゲーム」を手に入れる事が許されるのだ。

1986年まだ「パソコン通信」なるものが、金持ちのお坊ちゃまの趣味の域を超えず、ちょっとチャットしただけで猛烈な料金が発生していた時代の話である。(知人のK君はモデム付きのPC-8801mk2TRで親の給料が吹っ飛ぶ程チャットをしたとか・・・。そんな悲劇は我が田舎町でも多く語られていた。)

そういう時代の中、ミシン等で有名だった「ブラザー工業」より、画期的な発表があった。
何とパソコンのソフトを、自動販売機で売るというのだ。
しかも、ソフトは通信で送られて来るという。
つまり、「品切れ」などというものが無いのだ!(田舎なので、パソコンのソフトが、まずそんな事態になった事は無いが・・・。)

自販機の名前は「武尊」(タケル)!
うーん、正直ダサ格好いい?ネーミングである。
(※のちにローマ字でTAKERUと改名)

早速、ラインナップが!


おお!あの「アスピック・スペシャル」も、「武尊」の専売なのか!
話の種に一度は行かねばなるまい。・・・と、Ryo君と物見遊山でソフトを買いに出掛けたのだが・・・我々は重要な事を見落としていた。

「武尊」君の居場所である。

我が県唯一の、「武尊」君は、駅前の商業施設内しかも、パソコンのパの字も無いような、アパレルショップばかりが営業するフロアのド真ん中に鎮座しておられた。
無論、パーディションなどという気の利いたアーマーは存在せず。


付近を闊歩する小粋なねーちゃん達の好奇の目に耐えながら(注1)、マニュアルをプリントアウトしたり、ディスクを書き込んだりしなければならないという。
童貞男子にとって、公開処刑場に近い場所だった。

何故にこんな場所に!?
通常は常時パソコンを置いてある、電気店何かにあるんじゃねーか?
などとぶつくさいいながら、機械に接近。
とにかく、「武尊」専売ソフトというのは、逆に言うと「そこ」へ行き、生還した猛者のみが遊べるという事。

覚悟は決まった。
Ryo君とアイコンタクトを取ると、「さも、当然。」と言わんばかりに機械へ近づいて行った。

が、我々は愕然とすることになる。
しばらく、偵察と称して、フロアを見回っていた我々の目に映ったのは先客の姿だった。
しかも、今始めたばかり。
電車に乗って帰路につく頃には、いつもよりどっと疲れた我々。

因みに、大学時代住んでいた街でも「武尊」はありましたが、やはり、オシャレな商業ビルの一角(注2)にあったのを記憶しています。


まあ、その頃になると女性店員さんが居る本屋さんのレジに、平気でエロ本を持って行けるくらい図太くなってましたが・・・。



PS.さて、こちらの武尊ですが、ワリと我々はお世話になった記憶がありますね。
「ソーサリアン」のファルコム社外のシナリオとか、「セレクテッドソーサリアン」とか。X68kでは「宝魔ハンターライム」シリーズとか・・・。
その技術は後の通信カラオケでも利用されているとか。

注1:人はそれを「被害妄想」と、いいます。

注2:ここらへん何かの業者繋がりで・・・というのがあったのでしょうか?